vol.8 浦小校歌にも歌われて
「歌うよしきり 浮かぶはカモメ 朝の江戸川 川風やさし・・」
昭和37年に制定された浦安小学校の校歌の出だしの一節です。
この歌にもあるように、ヨシキリは浦安の野鳥の中で最も代表的な仲間であり、かつ最も親しまれてきた鳥ではないかと思います。ちなみに、ヨシキリは校歌に詠まれているだけでなく、浦安の鳥にも選定されています。
東と南は東京湾、西に江戸川、そして境川沿いの街を中心に南北にひろがる水田地帯、この地理的背景の中で点在するヨシの群生地、そこを格好の棲み処とするのが、このヨシキリなのです。
特に、そのすばやさとヨシの中での行動が多いため、繁殖期をのぞいて姿を見るこ
ともまれですが、あの独特の鳴き声は、それを聞いて育った私達にとって忘れるこ
との出来ないものです。 その歌声は、一般に「ギョギョシ、ギョギョシ」と聞こえ
るそうですが、浦安では、この鳥をケケチンとよぶように「ケケチ、ケケチ、ケケチ」とさえずっているというとらえ方をしています。かくいう私も20代の後半までこのケケチンが正式にはオオヨシキリであることを知りませんでした。
さて、このオオヨシキリはウグイス科に属し、体はスズメより大きく、その上面は赤さび色をおびたオリーブ褐色、下面はクリーム白色、翼と尾は暗褐色をした夏鳥で、おおむね4月から5月にかけて渡って来て、9月の中頃去って行きます。卵は青味かかった灰白色の地に、黒と淡いスミレ色をしたあらい斑点があり、その大きさはウズラの卵に近く、通常5個ぐらいずつ産卵するようです。
このケケチンの卵と、ヨシの茎につくられたコップ型の深い巣は、これを求めてヨシの野をかけわけて遊んだ少年時代の想い出とともに印象的です。
開発のすすんだ浦安の町は、わずか十年前と較べても、その様相を大きく変えていますが、堀江南部地区の一画や埋立て地の原野の中で、夏の間、今でも忙しそうにさえずるあのヨシキリの声をきくとき、水際の町浦安の今後とともに、末長くこの鳥が訪れてくれることを祈らずにはいられません。
去る3月19日、伝統ある浦安小学校の卒業式に出席し、巣立ち行く百五名の卒業生の前途を祝しながら歌った校歌、その中に歌われているヨシキリを最後に、私のつたない文章と写真(一部)で綴った、このシリーズを今回で終了させていただきます。
浦安にはまだまだ沢山の野鳥の仲間がいます。私も引き続きその生態を調べながら、野鳥保護の立場にたって活動していきます。ご愛読に感謝いたしますとともに一人でも多くの方々が今後、「浦安の野鳥」を愛して下さることを心から希望して、筆をおきます。
昭和55(1980)年3月
宇田川 敬之助