vol.3 まぼろしの干潟で再会
浦安の海は東京湾の一番奥まったところに位置しており、その遠浅の海面の大部分が、昭和43年の漁業権全面放棄の頃まで、海苔や貝の養殖場として利用されていました。
また、土手のすぐ下から遠々と広がる干潟には、十数種にのぼる磯ガニやハゼ、エビ、アサリ、ハマグリ、オオノガイなどの貝の仲間、イソギンチャクな、ど海辺の生物、特に干潟に棲息するもののほとんどが生活をしていました。
この遠浅の海は、埋立てによる土地造成事業によって陸化し、今では多くの住宅団地が建設され、人と車と建築物の世界に変貌してしまいました。野鳥たち特に海岸の干潟に渡ってくる鳥の仲間も、この大きな変化に驚いていることでしょう。
春四月から5月と秋9月から11月にかけて、日本各地の干潟にいろいろな種類のシギ、チドリがたくさん渡って来ます。中でも浦安の干潟は日本でも、有数のこれらシギ、チドリなどの渡来地として知られていました。
シギやチドリの仲間は、潮が引き始めると小群、大群または他の種類との混群で干潟に舞いおり、活発な動きで餌をさがします。潮の引いた直後は砂や泥が柔らかくて、ゴカイやシャコ、エビ、カニなどをとらえやすい利点があり、生活の知恵でしょうか、彼らは通常干潮線にそって餌をさがします。
かつて浦安の干潟を訪れたシ ギ、チドリの仲間には、ダイシャクシギ、チュウシャクシギ、ホウロクシギ、ツル シギ、アオアシシギ、セイタカシギ、メダイチチドリ、ツバメチドリなど数えきれません。チドリの仲間がチョピー、チョピーと声鳴きするのにくらべて、シギの仲間がピィーヨ、ピイーヨ、ピピピピと美しい声で鳴くのも面白いものです。
先日、私は久し振りに二期の埋立地に行ってみました。時期的にチドリやシギの仲間が訪れている頃なので、彼らとの再会を期していたのです。そのために彼らの習性を考え、埋立地の中でも、吹き上げした土砂がまだ良く固まっていないところ、
さらに、雨あがりで水溜まりのある場所をさがしました。これはちょうどかつての干潟それも潮が引いた直後の状態に似ているからです。
幸い、鉄鋼団地(C地区)の沖側で、ミユビシギと思われる小群約40羽と出会いました。朝日を受けて、遠来の友人たちは、人工の干潟、それも、云うなればまぼろしの干潟の、水際近くで忙しそうに餌をあさっているのでした。再会の感激に加えて、何かしらいたたまれない気持で、私はシャッターを切りました。奇しくもこの場所は、先般の議会で「千鳥」と命名された場所です。