vol.4 庭に1本実のなる木を
私たちの生活の中に野鳥がともにあることの楽しさは、はかり知れないほど大きいと思います。朝は小鳥のさえずりにめざめ、夜は巣へ帰る野鳥たちとの別れのあいさつではじまります。都会化した今日の私たちの生活には、全く理想としか思えないような気がするでしょう。しかし、これは理想でもなければ、夢でもありません。
いま野鳥たちは、人間と共存できる生活の場、生きていくことの出来る環境を求めています。彼らが求めているものを、それも私たちにとっても有益な身近なものを、用意することによって、野鳥たちとの世界がひらかれるのです。
秋が深まり冬の訪れを感じる頃になると、主に山野で生活していた鳥たちも、山から里へおりて来ます。山野にあった木の実などが、冬の訪れとともにほとんどなくなり、餌を求めて私達の近くへ飛んでくるのです。こういった時期に、鳥たちに餌を提供すること、これが最も手早い彼等とのつきあいのはじまりです。
私の家の庭には,桃の木と柿の木があります。これらの実のなる木は野鳥たちにとって最も魅力のある目標であり、晩秋から冬の間の大事な生活の場であります。
私のところでは、数年前から熟す前に落ちた柿や桃の実を取っておき、真冬になって枯枝ばかりになった木々の小枝にさして、野鳥たちに提供しています。また、餌台を庭のすみにおき、残飯やパンのみみなどを与えることも試みました。
私の庭を訪れる野鳥たちは、ムクドリ、ヒヨドリ、オナガ、モズなどが主ですが、時には籠から逃げたと思われるブンチョウやセキセイインコがやってくることもあります。
その中からムクドリについて今回は少し書いてみます。
ムクドリはどちらかと云えば夏鳥ですが、雪の少ない関東以西では留鳥として1年中みまれます。かつて稲田の多かった浦安にも何千というムクドリが、大群をなして漂行し、田んぼに舞いおりては餌をあさっている光景に出会ったものでした。
彼らの好物は、稲の害虫であるニカメイチュウやイナゴ、ツトムシですから、当時農家の人達にも愛された鳥の一つであったのです。通常はキュキッ、キュリリリッと澄んだ声で囀(さえず)りますが、警戒時にはギエーッ、ギエーッと鳴きます。
体はスズメより大きくツグミよりやや小さく、頭は黒く全体的には灰褐色、腰と顔は白で、特徴的なのはクチバシが橙色、脚は黄色です、一般的な鳥なので、多くの人の目にふれていると思います。
ここで皆さんにおすすめしたいと思います。実のなる木を庭の片すみに一本植えてみませんか。このことが、あなたと野鳥との出会いのはじまりとなります。少しでも多くの庭に野鳥が訪れることによって、私たちの生活はさらにうるおいのあるものとなるでしょう。そして緑あふれる海浜都市をめざす私たちの町浦安が、その緑の中で野鳥たちと常に語り合うことの出来る、自然と調和した街になることを私は夢みているのです。