vol.6 水と緑の自然公園を
昨日の雪もまぶしいばかりの陽光に照らされてほとんどその姿を消した昼下り、 役場庁舎西側に広がる秋山さんの養魚場跡の池沼は、春を思わせるたたずまいでした。
「クエーッ・クエーッ」という甲高い鳴き声が、土手の下の大きな松の木の裏から聞こえます。そおーっとのぞき込むと、カモの仲間たちが6、7羽群をなしており 餌をあさりながら泳ぎ廻っていました。
カルガモの中にマガモの雌が1、2羽混じっている様ですが、近づくと枯れ葦の 中にかくれてしまうので、はっきり確認出来ません。近くには、2羽のバンが尾を 上に立て体を前後に振る独得な泳ぎ方で泳いでいます。
あたりを良く見まわすと、他の区画の池にも白サギにまじって2、3羽づのカ モの仲間たちが餌をあさっているのがわかりました。はるばるシベリアから今年も この池に渡ってきてくれた古い友人達に接し、ある種の興奮をおぼえながらシャッ ターを切りました。
カモについては沢山の想い出があります。カモやバンが、浦安、行徳のあちこち に散在していた池や沼、圦(いり)とその周辺の葦の原に群をなして集まり、そこ で巣をつくり卵を産み子育てをするという情景が随所に見られた頃のことです。
当時小学校高学年だった私たちは放課後、数人の仲間が集まり、このカモやバン の巣をさがし、そこに産みおとしてある卵を採りにいく一種の遊びに興じていたの です。今考えれば全く罪悪なことですが、あばた模様の小さな卵を手にして「今日 は何個」「おれは何個」とお互いに見せ合い、その成果を競っていたことだけが、な つかしく思い出されます。
また漁業組合につとめていた頃、害鳥駆除という海上勤務で猟銃を持って番船に 乗り、カモの仲間を追い求めことがあります。これは組合で管理するアサリ、ハマ グリの養殖場にカモの仲間が集結し、稚貝を食べてまうため、それを駆除する仕事 でしたが、幸か不幸か、まだ十代であった私にとって、鉄砲は文字どおり重荷で、 一回も命中したことはなく、追い払うだけの効果しかなかったのですが……。
浦安にもかつて猟区があり、解禁になると多くのハンター達がカモ猟にやって来 ました。朝靄をついて銃声が響き、葦におおわれた水面から、カモ達が一斉に飛び 立つ光景が見られましたが、これも今は昔の話になりました。
野鳥保護の立場から云えば結構なことだと思う半面、それだけ自然環境がなくな ったこと、カモ達の数が減ってしまったことを考えると複雑な気持ちです。
秋山さんの池沼が、昔の浦安の面影の一つとして、わずかに残っているというこ とは、そこを訪れる水鳥たちはもちろんのこと、私たちにとって誠に貴重なことです。発展していく本町のシビックセンターの一角に、これが形を変えた水と緑の自 然公園が、関係者の協力のもとに近い将来できることを望んで止みません。