「私は田んぼの中にいた」
今年も秋がやって来た。 実りの秋がやって来た。 黄金色に波打つ 豊かな稲穂の広がり どこまでも高い青空のもと 収穫の時を待つ 心おどる風景 今 浦安には田んぼがない 都心からわずか十五キロ 高度経済成長の波に乗って 宅地化が急速に進んだ 田んぼは次々に埋め立てられ 十年、二十年の年月を経て 住宅や工場にかわり 今、浦安には田んぼはない 稲刈りのシーズンが来た 今日は心待ちにしていた稲刈りの日だ 中学生の私も手伝う 学校は農繁期休暇で休みだ 一家総出の刈り入れは 朝早く始まる 私の役目は稲運びと稲かけだ 手際よく刈り取られた稲束を 持てるだけまとめて畦道に運ぶ 次から次へと運ばれた稲束は のろしと呼ばれた三段干しの稲架けに架けられる これも私の役目の一つだ 今は遠い思い出の中 私はその田んぼの中にいた 今 この街に田んぼはない オニヤンマが飛んでいる 稲田の上をゆうゆうと飛んでいる シオカラトンボの群れ飛ぶ中を ゆうゆうと飛んでいる 時を告げる大蓮寺の鐘が響く 西の空に向かって 遠い遠いあの日 私は田んぼの中にいた
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一 とんぼを追った あの野原
魚をとった あの小川 その面影は 今なくも 思い出あらた 夢駆ける 二 アサリをとった あの浜辺 みんなで泳いだ 境川 きれいな水辺 今遠く 思い出はるか 夢の中 三 こがねの波の あの田んぼ 漁船でにぎわう 東みよ 古き浦安 今なくも 思い出はるか 夢をよぶ 四 みどりあふれる 浦安の 新しい街 広がれり 時を刻みて おんだらん 思いをのせて 夢はるか 桂林での船旅を楽しむ
竹江から遊覧船に乗る 離江を下る船旅の始まり 晩秋なのに川面をわたる風は快い 四時間の行程 胸躍る一瞬 デッキに出て 左右に広がる山並み 岸辺の移りゆく光景を楽しむ 山紫水明の世界が 目の前にある 墨絵の中に入り込んでしまったようだ 私たちの乗る遊覧船のすぐ横を 網をたぐる小舟が その波を受けて大きく揺れている 初老の漁師が 日焼けした顔を上げる 山影が透き通った水面にくっきりと その美しい容姿を写しだして 私たちを誘い込む 桂林の魅力 離江を下る船旅は 時を忘れ 続く 夜来の大雨 周辺の道をおおいに冠水せり
蘇州寒山寺の塔に登りて 見渡せば 道みな川の如しとなりぬ 蘇州は川多き処なれど 更にその数を増し 何れが川か道か 知り難し 岸の柳のみ それを知るかと想う 今は雨止みて 緑ひときわ 爽やかなり |